B脱水と点滴
よくお母さん達から発熱しているので点滴してくださいとか風邪ひいたけれど明日発表会があるから点滴してでも治してくださいと頼まれますが、点滴は解熱させたり、風邪を治したりする作用はありません。以前に発熱して点滴をしてもらったら翌日に熱が下がっていたからといわれるお母さんがいますが、それは点滴をしてもしなくても熱は下がっていたのです。点滴はあくまで脱水状態を改善するためのものです。高熱をだしている子が十分な水分補給ができなかったり、水分を摂取すると嘔吐するような病状では大なり小なり脱水を起こしていると考えられ、脱水のため元気がなかったりぐったりしているような子には魔法のお薬のように元気になります。点滴によって脱水を予防することもできません。しかし点滴をすることで少しでも脱水を解除できたり、電解質(ポカリスウェットなどに入っているようなもの)や糖分を補給することで病状は軽くなることはあり得ます。また抗生剤の内服が不可能な子には、液体の抗生剤を点滴でいれることも可能です。だから点滴すること自体は悪いことではありませんが、点滴にあまりに過剰な期待をしないでいただきたい。なんでもかんでも点滴をすれば良いというわけではないことを覚えておいてください。

A発熱と解熱剤
発熱した時に解熱剤で熱を下げることによって病気が治ったと勘違いしている方いらしゃいませんか?解熱剤はあくまで対症療法(病気を根本的に治したのではなく一時的に抑えているだけ)なのです。発熱は生体防御反応のひとつで、例えば体内にウィルスなり細菌が侵入してきたとき、体が病原体の侵入を感知し自己防衛として発熱することでその侵入者を撃退しようとしているだけなのです。よって発熱することは防衛反応が起こっているということなので体にとってはいいことなのです。ただ発熱をする原因(病原体が体内に侵入してきた)があるため、みなさん発熱した発熱したと大騒ぎされるのです。このように考えると病気になった時は発熱させていた方がより早期に侵入者を撃退できるため解熱剤を使用しないほうが体には良いわけです。しかし、高熱を出して十分な睡眠がとれないとか、水分の補給もままならなくなると体力が消耗されますし、また脱水も起こしてしまいます。こうなっては、病原体と戦うにも戦いようがなくなってしまうので、子どもには一応の目安として38.5度以上の発熱をしていてなおかつ全身状態が悪いとき(寝れない、水分が取れない、ぐったりしている等)には解熱剤を使用したほうがいいと考えます。
ここで一つ付け加えておきますが、解熱剤の使用はできる限り屯用で使ってください。抗生剤等とともに1日2回とか3回とか定期的に内服していると、病状の重軽度や経過(熱がない時に内服させると実際は発熱していたのに解熱剤内服したために発熱せずに済んだのか、解熱剤の使用の有る無しにかかわらず発熱していなかったのか等)がわかりにくくなるからです。

@風邪と抗生剤
よく風邪をひくと抗生剤(細菌を殺す薬)を処方されます。僕も”風邪ですから抗生剤を出しておきます”と患者さんに話します。でも、厳密には間違いです。風邪の原因はほとんどがウィルスで起こっています。主にはライノウィルスやコロナウィルスなどによって発症しますが、抗生剤は上にも書いたように細菌には効きますが、ウィルスは殺せないのです。ウィルスを殺したり増殖を抑えたりする薬は、有名なのではみずぼうそうの時の”ゾビラックス”やインフルエンザに対する”タミフル”等です。ではウィルスはどうやってやっつけるのかというと自分の免疫力で抑えるのです。よって僕が患者さんを診察したときに、その患者さんの風邪が100%ウィルスで発症していることが、何らかの手段によって知ることができるなら、風邪に抗生剤等処方しなくていいわけで、もっというならかえってウィルス感染に抗生剤等処方していると結局はその抗生剤が効かなくなってくる菌(耐性菌)が出現してきますし、また大なり小なり不必要な抗生剤を内服することによって下痢を起こしたり薬疹がでたりなど副作用のみが起こってしまうことになるのです。
しかし、現実にはウィルスで発症しているのか、細菌で発症しているのか、または同時(混合感染)に発症しているのかは見分けることは非常に困難です。細菌による感染を起こすと重症化することが多いので、風邪をひいたときには少なくとも細菌は抗生剤でやっつけておいた方が無難なので医者は風邪に抗生剤を処方するのです。
抗生剤を飲んで解熱したのなら、ひとつは細菌感染であったため抗生剤が効果を示したといえますし、もうひとつは抗生剤を飲んでも飲まなくても自力でウィルスをたたいたので解熱したのかもしれません。
よって風邪だからといって何でもかんでも抗生剤を飲むのは理屈に合っていないことを一応理解しておいてください。