D咳と鎮咳剤
咳をとめるお薬も下痢をとめるお薬と同様、なんでもかんでも咳止め飲ませて止めればよいというわけではありません。咳も気管内にはいった病原体やそれによって生成された痰を排出するために発生する症状なのである程度は咳をさせないといけません。ただし咳(特に夜間の咳)は体力を消耗させたり夜間の咳は睡眠不足にもなりがちです。ある程度の体力や睡眠を維持するために鎮咳剤をのませるのは有益なことと思います。当院では咳の重症度によってはきつめの咳止めも処方しますが、軽度の咳や中等度であってもはじめからきつめの咳止めを飲ませるのは賛成できません。どんな症状も自力で回復できるものなら自力で回復させる、そのちょっとした手助けを鎮咳剤が担っているぐらいに考えてください。また少し話はかわりますが、最近気管支拡張剤のテープ(商品名はホクナリンテープといいます)を処方されることが多いと思いますが、あのテープはあくまでも気管支を広げるためのテープで咳を止めるためのお薬ではありません。無闇に咳がでているからといってそれも他のお母さんからもらって貼付するなどの行為は慎んでいただきたい。気管支拡張剤は時として心臓や胃に負担のかかるお薬です。必ず医者の判断の元で貼付するようにして下さい。

C下痢と下痢止め
下痢の原因はたくさんあります。子ども達が下痢をする一番の原因は急性腸炎です。みなさんがよく知っている急性腸炎の原因は、ロタウィルス、O-157、サルモネラ菌、カンピロバクター菌などでしょう。下痢という症状は主に腸管内に存在する病原体をいち早く体外に排出するために起こる現象です。有名な話が、以前O-157が流行ったとき下痢止めの薬を内服するかどうかで問題になりました。なぜならO-157といわれる病原性のある大腸菌によって腸炎をおこすのですが、問題はO-157から産生されるベロ毒素が悪さをするからです。つまり、下痢止めのお薬を飲ませると下痢は止まりますが病原性大腸菌は体内に残存するわけです。その残存した菌からベロ毒素をだされると重大な合併症を引き起こしかねないのです。僕の意見としては、下痢止めを使ってもいいとは思いますが、ロペミン等の強力な下痢止めのお薬を安易に飲ませると、腸管の動きが悪くなり菌などを残存させるばかりでなく腸管内のガスも排出できにくくなりおなかが張ってきたりもします。おなかが張るとかえっておなかがいたくなります。そこで少し緩めの下痢止めを飲ませることによって急には下痢は止まりませんが、徐々に下痢を抑えなるべく病原体を体外に排出しながら止めてやるほうが子どもたちにとって有益なことと考えています。結論的には下痢は抑えてやるほうがよいけれど急に止めるのはかえってよくないと思っています。特に乳児にはロペミンなどはなるべく飲ませないほうがいいです。